第2回 熊本大学 eポートフォリオ国際セミナー(2013年3月8日)
近年、高等教育機関を中心に、学習カルテ、教育カルテ、就活システム、学習ポートフォリオなどの様々な呼び名で eポートフォリオシステムの導入が急速に進んできています。しかし、組織内での運用に目を移すと、まだまだ、導入システムを利用するための試行錯誤が続いており、成果を上げるまでには至っていないのが実情のように思えます。その大きな理由として、国内各機関において、eポートフォリオを活用した教育の実践者が、まだ非常に少数であること、eポートフォリオ利用の意義やメリットが、学生、教員の双方で十分に理解されていないこと、それぞれの組織のもつノウハウ、事例の共有がまだ進んでいないこと等々が考えられます。
一方、ポートフォリオを利用した教育、学習の先進国である米国では、教育・学習のみならず、組織や人事評価、教員相互による授業改善 (FD)についての取り組みにも利用されるなどの広がりを見せています。そこで、本セミナーでは、米国内の高等教育機関において長年にわたり、ポートフォリオを活用した教育実践、教員へのサポート業務、FD活動に従事して来られた先生をお招きし、ポートフォリオの活用実践の事例等を学ぶと共に、国内においてeポートフォリオを導入し利用されている各教育機関における教育実践者、ご自身でポートフォリオを作成され業務・学習活動、その改善に活かされている方、システム管理運営に従事されている方等々との情報交換を行いたいと考えています。これからシステム導入を検討されている方、eポートフォリオって何?という方も、是非ご参加ください。国内における今後の学習と教育の改善のためだけでなく、様々な分野でのポートフォリオ利用の促進を図りたいと思っています。
本セミナーは、国内各機関において、ポートフォリオを利用した教育実践、eポートフォリオを利用した職務改善ほか、教育へのICTの利活用を実践されている皆様との情報交換、交流の場の提供を目指しています。そのために、招待講演者、参加者を交えた情報共有・交換のための少人数に分かれたディスカッションラウンドテーブルや、ワークショップ等の企画も検討しています。
多数の皆様のご参加いただき、皆様と活発な意見交換ができることを楽しみにいたしております。
(注)本セミナーでの使用言語は日本語及び英語です。
日時:
2013年3月8日(金)~9日(土)
会場:
熊本大学 くすの木会館レセプションルーム (地図No.8)
招待講演者紹介:
Paul Treuer 氏
Director of University of Minnesota Duluth Supportive Services
http://www.d.umn.edu/~ptreuer/
Paul Treuer氏は、米国内、世界各国300以上の機関で利用されているSakai/Open Source Portfolioの基礎となったeポートフォリオシステム(OSPI)を2002年に設計・開発を行った人物で、その後、10数年に渡り、ミネソタ大学 ダルース校にて、学生サポートだけでなく、同校におけるFD活動等を通して、教職員へのサポート、eポートフォリオを利用した授業設計等々の指導、補助を務めてきている方です。本年9月からは、教育担当副学長直下の組織で、ポートフォリオや、個別指導(peer tutoring)他を通して、同校における学習改善に従事しておられます。
Janice A. Smith (Ph.D.) 氏
Consultant for the assessment of learning,Three Canoes Consulting
http://threecanoes.com/
Janice A. Smith 氏は、ミネソタ大学英語センターやティーチング&ラーニングセンターの教育コーディネータ、英語教育修士課程プログラム副プログラム長、新設学部設置準備プログラム長等を歴任された後、Sakaiシステムを総合的にサポートするrSmart社の主席教育コンサルタントとして、米国内の20以上もの高等教育機関へのeポートフォリオシステムの導入支援と同システム利用のための教職員への指導支援に従事して来られました。
現在は、Open Source Portfolioのカスタマイズ、教員のポートフォリオ利用を支援するThree Canoesコンサルティング社長を勤める傍ら、オープンソースポートフォリオコミュニティ会長も努めていらっしゃいます。
講演概要:
招待講演
Paul Treuer
ePortfolio: Implementation Strategies
資料(PDF598KB)
Janice A. Smith
Planning for Success with ePortfolios
資料(PDF192KB)
What is an ePortfolio and how can it contribute to successful learning? In the last decade projects around the world have defined ePortfolios in many different ways, but we believe an ePortfolio cannot be everything that anyone wants it to be. Our presentation identifies the primary purposes of an ePortfolio, the benefits of having used one, and the literacy skills necessary for successful ePortfolio use. Successful ePortfolio users become independent life long learners in an information-rich world, know how to be effective collaborators in knowledge-generating communities of practice, and continue to focus their learning according to specific outcomes or questions of inquiry. To be successful with ePortfolio use, students must acquire literacy skills to document their learning, self-regulate to meet learning goals in any learning context, think critically and reflectively about their learning, and integrate their learning by synthesizing and transferring it to any number of situations. The literacy skills necessary for success with ePortfolios are the same skills necessary for graduates of our institutions to be successful in their lives and careers.
一般講演(1)
eポートフォリオの活用支援について
増岡由貴(広島大学)
資料(PDF2.5MB)
広島大学大学院生物圏科学研究科では、「教育記録システム」をH20年度から開発、H22年度から運用を開始した。その担当者であった立場から、開発・運用時における課題を見直し、eポートフォリオ活用支援について述べる。
Maharaにテンプレート機能を追加したeポートフォリオシステムの開発
隅谷孝洋(広島大学)
資料(PDF1.4MB)
広島大学では、Maharaをベースとして大学院学生指導用のeポートフォリオシステムを開発、昨年10月から一部部局で運用をはじめている。開発したシステムでは、Mahara本来の手軽なページ作成機能にテンプレート機能を追加して、定型的なポートフォリオとしても利用できるようにした。ここでは、システムの概要と適用例を紹介する。
超短期日本語・日本文化プログラムにおける eポートフォリオの活用
−教育モデルの構築に向けて−
宮城徹(東京外国語大学)、島崎俊介(東京学芸大学)
資料(PDF2.7MB)
東京外国語大学留学生日本語教育センターは、2012年7月文部科学省より、「日本語教育・教材開発・実践教育研修」の教育関係共同利用拠点に認められた。現在その具体的活動内容を策定中であるが、複数の教育機関から集う学習者に対し、eポートフォリオを活用した日本語学習の推進をその柱の一つに据えようと考えている。本発表では、超短期留学生に対する日本語・日本文化教育のeポートフォリオ活用のモデル構築に向けた実践の報告を行う。
入学前留学プログラムにおけるeポートフォリオの活用と効果
野田啓子(立命館アジア大平洋大学)
立命館アジア大平洋大学(APU)では、入学予定者を対象として、3月に米国の協定大学で学ぶ入学前留学プログラム 「ACCESS」を2011年度より実施している。英語力、異文化理解力を向上させるとともに、大学4年間の学習目標を立て、初年次教育への円滑な接続を目的としており、異文化経験・学習記録およびリフレクションを促すツールとしてeポートフォリオを活用している。本講演では、プログラムにおけるeポートフォリオの利用事例を紹介し、効果について報告する。
参考 http://www.glue-apu.net/program/access.html
一般講演(2)
Designing Courses based on SECI model with Mahara as an e-Portfolio
田中洋一、澤崎敏文(仁愛女子短期大学)、山川修(福井県立大学)
資料(PDF3.1MB)
福井県内の高等教育機関が連携して仮想的総合大学環境を構築するプロジェクト「Fレックス」では、eポートフォリオとしてMahara、LMSとしてMoodle、SNSとしてOpenSNPを用いている。MaharaやMoodleを用いたブレンド型授業に関して、SECIモデル(知識創造理論)に基づく設計方法を報告する。
グローバル人材育成に向けたeポートフォリオシステムの設計
宮崎誠(法政大学)
資料(PDF3.5MB)
法政大学におけるグローバル人材育成の取組の一環として構築中であるeポートフォリオシステムについて報告する。システムには、カスタマイズ可能なオープンソースのMaharaを採用した。また、取組の達成度を評価する枠組みとしてルーブリックを活用する準備を進めており、Maharaには独自開発プラグインであるルーブリックを実装する予定である。
eポートフォリオの全学導入への取り組みとそのシステムに関する検討
中野裕司、久保田真一郎、永井孝幸、喜多敏博, 松葉龍一、宇佐川毅、本間里見(熊本大学)
資料(PDF3.5MB)
熊本大学では、平成21から23年度にかけて実施した学士課程GPの中で、学習成果の修得状況を蓄積するeポートフォリオシステムを開発し、それを元にeポートフォリオの全学展開を行なっている。しかし、学習成果に関するより深い検討、カリキュラムマップの考え方の導入、授業等での汎用的な利用、保存項目の検討等、様々な対応を迫られている。どれも教育改善を目指すもので重要な課題であるが、全学展開を前提としてシステム構築を進めているところである。現在の検討や取り組みの状況を報告するとともに、皆様のお知恵を拝借したい。
プログラム:
13:00-14:00 | 招待講演 Paul Treuer 先生 | |
---|---|---|
14:10-15:10 | 招待講演 Janice A. Smith 先生 | |
15:20-17:30 | 一般講演(1) | |
18:30-21:00 | 情報交換会 |
10:00-12:00 | 一般講演(2) | |
---|---|---|
13:00-15:00 | ラウンドテーブルセッション |
※ 今後、時間変更等がなされる可能性もあります。本会に関する情報は、本Webサイトにて随時公開していきます。
[ラウンドテーブルセッションに関して]
今回のセミナーの特別企画として、ラウンドテーブルセッションを催すことにいたしました。
このセッションでは、日頃、皆様がeポートフォリオ学習、運用実践において、感じていること、悩みなどを、海外ゲストの2名にコンサルティングしていただこうというものです。
もちろん、参加者各位との意見交換も目的としております。
そこで、参加者の皆様から、海外ゲストのお2人に質問してみたいこと、日々の実践においてアドバイスをいただきたいことなどをご提供を求めます。 2/25(月)までに、下記のアドレスまでお送りいただきたく思います。もちろん、日本語で結構ですし、複数個お送りいただくのも歓迎いたします。
皆様よりいただきましたご質問等は、英訳の上、事前にゲストの2人に渡しておき、当日の運営を円滑にするつもりでいます。
皆様からの情報提供、トークアジェンダのご提供をお待ちいたしております。
[情報交換会のご案内]
日時:3/8(金) 18:30-21:00
場所:プリマヴェーラ
熊本市中央区南坪井町1-10 ラ・レジェンダ並木坂1F
096-351-6317
http://www.higonavi.net/shop/shop.shtml?s=1600
会費:4,000 円 (当日、現地にて徴集)
講演動画:
講演(学内専用)
一般講演の募集
一般講演として、皆様の組織において導入されているシステムのご紹介や活用事例、自身のポートフォリオ利用法の紹介などをいただければと考えております。それらに関する情報共有は、現在導入を検討している参加者にとって有用なだけでなく、より良い運用を検討し、自組織の改善につなげて行きたいと考えている参加者にとっても、必ず有用なものになると考えます。本セミナーを活用して、皆様とポートフォリオ利用/学習/教育提供に関するナレッジの共有を図りたいと考えます。
※ 一般講演をお申し込みいただいた皆様には、お申し込み後に、実施事務局より、講演時間ほかに関する詳細なご連絡をいたします。
Webによる講演申込は締め切りました。
今後、一般講演のお申し込みをご希望の方は、下記のアドレスへ、直接、お問い合わせください。
ご参加ありがとうございました。